自覚~沢島side2

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『誠司 今まで無視してごめん。あなたのケーキがまた食べたい。私も新しいところで頑張ってる。あなたもどうか幸せになってね 有紀』  俺はその文字を見つめてしばらくじっとしていた。 「……ちょう?課長?どうしたんですか?」  パタパタと音がして田崎が来た。俺は慌ててエプロンのポケットにそのカードを入れると深呼吸した。 「酔っ払ってるんでしょ?危ないから私が切りますよ」  横に立つと、俺から包丁を取り上げて美味しそうといいながら、切っている。  俺は彼女をうつろな目で見ながら、複雑だった。  幸せになれ?自分は結婚するからこんなカード送ってきたのか。そんな奴だったのか、有紀。 「出来ましたよー。さてと、またコーヒーも芸がないから、紅茶入れますね。課長は座っていて下さい。ご飯のお礼に私がいれますからね」  お腹がいっぱいになってご機嫌になったのか、鼻歌を歌いながらお湯を沸かしてカップを出している。  俺はそんな彼女を見ながらひとりケーキを持ってテーブルへ戻った。
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