自覚~沢島side2

16/19
前へ
/236ページ
次へ
 もうひとくち。確かにうまい。前より素材の生かし方が上手くなっている。アイツはまた成長してるんだな。 「どうしたんです?具合悪いの?」  何も答えず様子の変な俺に、横に回ってきて、おでこに手を当てられた。ビックリして、身体を引いた。 「あ、すみません。でも熱はないですね。無理しないで、早く休んでください。先週もお忙しかったのに、朝早くから市場行って疲れたんじゃありませんか?あとは、全部私がやりますから……」 「……あ、ああ。すまない。少し休む」 「はい」  そう言って部屋に戻った。彼女がじっと俺を見ていたが考える余裕がなかった。  月曜日、俺は会社で様子が変だと皆に言われたが、とにかく今日中に有紀と会って決着を着けようと決めていた。  ケーキを作れなくなっていたのは、きちんと有紀と終わりに出来ていないからだと思っていたのもある。 「……早かったわね」  ホテルのカフェで彼女と向き合った。  あれから五年経っていた。少し大人びて自信がついたんだろう、目の力も強くなり、プライベートの幸せが彼女の美しさに磨きをかけていた。
/236ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1323人が本棚に入れています
本棚に追加