自覚~沢島side2

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 会った瞬間に少しの悔しさもあったが、別れて正解だったんだと思った。 「久しぶりだな。さあ、突然姿を消した理由を教えてもらおうか」 「今更だけど、色々と本当にごめんなさい」 「あの客のことは聞いたか?気づかず、すまなかった」 「そんなことない。あなたは会社と私の間に立って色々してくれていた。それに彼女のことは……そうかもしれないと思っていた」 「……やはりそうだったか」 「彼女が言ってきたのよ。正直、彼女のようなパティシエを雇う会社自体に問題があると思った。彼女が使えないのは前からわかっていたしね」 「……は、お前らしいな。それで会社に呆れて、俺にも見切りを付けたのか」 「やめて。あなたとはライバルであるうちは良かった。でも付き合うようになってあなたの優しさがあなたの能力を狭めていくのを目の当たりにしていた。何度か言ったはずよね」 「ああ。俺らしさを出せということだろ?コンビのお前と話し合うと必ずぶつかる。だが、お前が折れる性格じゃないのもわかっていた」 「だから、私がいなくなった。あなたに我慢をさせているのに気づいていたけど、自分が変われないのもわかっていたから」
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