自覚~沢島side2

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「……イチジクのケーキ。見事だ。さらにお前が目指す所に近づいているのがわかった。俺も遅くなったが巻き返す」 「もしかして、ケーキを作れるようになった?良かった……」  有紀はほっとした表情を見せた。 「ああ、つい最近だ。ある人の誕生日ケーキを作った」 「姿を消してあなたが作れなくなったと聞いて……でも私には連絡する勇気がなかった。ごめんなさい。繊細なあなたを追い詰めていたことにようやく気づいて、さらに連絡出来なくなった」 「お前のせいだけじゃない。何のために作っているのかわからなくなっていた」 「今は何のために作るかわかっているのね。もしかして支えてくれる人がいるの?」 「好きな奴がいる。その存在自体に救われているんだとようやく気づいた。有紀、結婚するそうだな。おめでとう」 「ありがとう。ホテルの人なの」 「お前のようなじゃじゃ馬を乗りこなすなんて大人な男だな、きっと」 「そうね。あなたほど繊細ではないかな。いい加減にしろっていつも怒られた。でも、素敵な人よ」
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