恋の勝負ケーキ

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 鬼とは課長のこと。普段の課長は鬼のように仕事に厳しいのだ。課長の直帰なんてみんなにとって憩いの日。  私もそれに便乗してあがると、急いでタクシーでホテルへ向かった。  カフェへまっしぐら。課長はいるだろうか?恐る恐る歩きながら、きょろきょろして周りを見た。  でも、背の高い彼のような人は見当たらなかった。そろそろとショーケースの前に移動した。  あった、あった。ショーケースの一番いいところに、最新作という札があって、オススメと書いてある。  例のイチジクのパウンドケーキが置いてある。ええ!?すごい値段なんですけど。これをくれたの?さすが元カノ。  いや、作った人ならあげられるのか?馬鹿なこと考えてショーケースをじっと見ていたら、帽子を被った人が出てきて、お決まりですかと聞いてきた。 「あの。このイチジクのケーキを作られた方は……今日いらっしゃいますか?えっと確か、お名前は有紀さん……」    思いきって勇気を出して鎌を掛けてみた。私、手が震えてる。
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