恋の勝負ケーキ

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 やっぱり。私は彼の胸を押して、身体を遠ざけた。 「おい勘違いすんなよ。決着を付けてきただけだ。それにあいつは結婚が決まったから連絡をよこしたんだ。イチジクのケーキはそのおまけだ」 「……は?結婚……え?」 「あいつは最後だからけじめだといって連絡してきたんだ。のろけも聞いてきた。馬鹿馬鹿しい。心配してくれなくても、俺も好きな女がいると言って別れてきた。それがお前だよ、すみれ」  私は何を言っていいのかわからなくなって、彼を見上げて固まった。想像と違った。どうしよう、なんて答えるんだっけ? 「すみれ」  彼はもう一度そう言うと、私の顎を捕らえて唇をついばんだ。 「……んっ……」 「好きだ、すみれ」  そう言うと、私の背中に手を回してぐっと力を入れて身体を近づけてキスをした。 「ん……、あ、ん……」 「変な想像して、出て行く準備して、馬鹿だな。お前はどこにもやらない。そうだ、お前ツインスターホテルにそれで行ったのか?チョコとオレンジのケーキが入っていた。あれも有紀の作品だろ」 「そうです。すごく美味しかった」 「ああ。作った作品はどこか似ているな」 「課長」
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