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この間来たときもその話を聞いたのだが、今更俺に戻れとはどの口が言えるのかと言ったら、澄川を辞めさせた責任を取れと言われた。
俺を守るために彼女がやめたんだと、彼女が好きだった篠田は食ってかかってきた。
澄川は新商品開発の重要な柱だった。彼女がいなくなって開発課は空中分解しかけた。
しかも、もう一本の柱だった俺も抜けた。大変だったのは容易に想像がつく。
それを、課長に昇格した篠田がまとめてきたんだが、あいつは正直パティシエとしての実力が足りない。
さらに、口が悪くて周りを使うのも下手だから、結局専務と衝突した。
専務は俺を戻すために、実家の母を巻き込んだ。母は専務と知り合いだった。
実家の商品を別ブランドで売ることが出来れば、相当利益になる。
俺の開発課への復帰は断れる状態ではなかった。
それで、商品のことを相談にきてちょうだいと言われたが、嫌な予感がする。
店に着いてすぐに客間に案内されて、見れば座っているお嬢さんがいる。すみれよりは少し年上の落ち着いた感じの女性だ。
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