1213人が本棚に入れています
本棚に追加
/236ページ
彼女はシフトが上がる時間になると、よく買いに来ていた。俺は家が近いのもあって、店の状況を把握するため顔を出すことがあった。いつも彼女はショウケースを嬉しそうにニヤニヤしながら眺めている。
その顔が面白いのだ。店員が彼女は常連だと教えてくれた。そして、いつも何かいいことが会った時、必ず買いに来るみたいですと教えてくれたのだ。
あの日……。俺が助けた日も彼女は来た。そして嬉しそうにショウケースをニヤニヤと眺め、いつもと同じケーキを買って帰っていった。でもレジの前で必ず綺麗な微笑みを見せる。えくぼが見えるその笑顔を見るのが好きで、今日はその笑顔を作る手伝いをしたと嬉しかったのを覚えている。
「え?田崎さんがいいんですか?どうして、また……もしかして面接の時のはなしで?」
人事担当の須田が俺の顔を見ながら言った。
「ああ、彼女は面白い。近くにいたら退屈しなさそうだ」
須田が呆れた顔をして見ている。
最初のコメントを投稿しよう!