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「それがねえ。彼は相変わらずよ。この間も見かけたけど、少し太ったかも。お前は綺麗になるし、まずいわね。会わない方がいいかもしれない」
「……とにかく、断るから。いいよね、お母さん」
「いいも悪いもないんでしょ。日曜日の夜に彼が来るんでしょ、だって」
「あ、うん」
「まあ、詳しくは後で聞きます……あ、いらっしゃいませ、そちらにどうぞ……」
お母さんは新しいお客様を案内するためにいなくなった。ああ、せっかくの美味しい料理が嫌な話をしたら味がわからなくなってきた。
夜になってお父さんが母屋の方へ戻ってきた。先にお風呂へ入って、軽く晩酌している。
お母さんも今日は店の方はアルバイトの人に任せてきたといっていた。本当なら、私が戻ってお母さんを助けないといけないんだけど、いずれお兄ちゃんがお嫁さんをもらえば私は用無し。
だから、結構早い時期から自分のやりたいことをやろうと考えていた。何しろ、食べる一方で作る方には興味がなかった。怒られてばかりであの頃は逃げ出すことしか考えていなかった。
「ただいまー」
お兄ちゃんの声だ。
「あら、勝俊早かったわね」
「すみれは?」
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