すみれの実家

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「えっと……そんなことはどうでもいいです。とにかく、彼も私がいいと言ってくれているし、結婚前提でお付き合いしています。だから、先輩との縁談はなかったことにして下さい。お願いします」  私はお父さんに頭を下げた。お兄ちゃんが口を開いた。 「父さん。この料亭の今後については俺はしげさんと色々考えていることがある。そのうち、戻ってきたら父さんに相談するつもりだった。ホテルとの提携なんて、ホテルの評判が良いうちはいいが、あっちに何かあればこちらも被ることになってマイナスになることもある。あんまりいい話だとは思えない」 「……確かに勝俊の言うとおりだわ。あなた、前から言ってるけど、すみれにその気がないなら私は断固反対です」 「っ!お前はいっつもすみれの味方だな」 「当たり前です。あなたがすみれを邪険にするからでしょ。こんな可愛い子を何だと思ってんの?あなたの料理が一番美味しいって今日も店で言ってたのよ」 「邪険って何だ?俺はこいつの幸せを守るために、近くていいところへ嫁にやろうと思ってだな」    ピンポーン♪玄関の音がした。 「あら、誰かしら?」  お母さんが玄関へ出て行った。
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