1324人が本棚に入れています
本棚に追加
「すみれー、ちょっときなさい!」
大きな声がする。私はびっくりして立ち上がって玄関を覗いた。
「すみれ。来ちゃったよ」
「……は?ええ!?仕事は?」
「ああ、三時頃直帰すると言って出てきた。すみません、突然伺って……宿は予約してますので、ご心配なく。あ、これはうちの菓子です。良かったらどうぞ」
「あ、お気遣いすみません。どうぞ、どうぞ、お上がり下さい。ちょうどいいところにいらっしゃいました。あなたの恋人は今窮地に陥っていましたよ。で、えっと、お名前は?」
「あ、すみません。沢島誠司と申します。よろしくお願いします」
私は彼の鞄を受け取って、スリッパを出した。
「沢島さん。娘がお世話になってありがとうございます。とても格好いいわ。良かったわね、すみれ」
「「は?え?」」
お母さんがにこにこして先に歩いて行く。イケメンに弱いのよね、相変わらず。お客様もイケメンが来るとにこにこしているし。
「ちょっと、誠司さん、連絡して下さいよ」
「……三時過ぎにしたよ。お前また、メール見てないだろ。まあ、いい。窮地だったんだろ?さすが俺だな。そんなことじゃないかと思ったんだ」
最初のコメントを投稿しよう!