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「彼はこの間実家に挨拶へ来てくれました。その時、両親だけでなく兄とも会いました。その上で父も納得してくれて、見合いは父から断ってくれるということになったんです。坂田さんと会わせる必要はありません。すでに終わっている話です」
「田崎さん、君、そんな子だった?随分言うようになったな」
「それを言うなら先輩も変わりましたね。私達、気が合わないと思います。早く気づいて良かった。それに、間違いがないうちで良かった」
「おい、間違いって失礼だろ!」
「私のことではありませんよ。そちらに迷惑がかかる前で良かったです」
私はレシートを握りしめて、立ち上がった。
「もうここまでで。お支払いはします。遠くまで来て頂いて、申し訳ございませんでした」
彼に向かって頭を下げて、きびすを返した。彼はフォークとナイフを握ったまま固まっていた。追いかけては来なかった。
帰りながらため息しかでなかった。私が悪い。最初からキチンとお父さんと向き合って話していればこんなことにはならなかった。
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