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「いや、別に義務はないけどな。手がかかるのは週末とか一緒にやってもいいし……」
「でも、最近私包丁使うのも怖くなくなってきたし、何をどのくらい入れるとどういう味になるとか、そういうことも大分わかってきました。だから料理が最近とても楽しくて……」
彼は私を見て微笑んだ。
「生徒が上達するのは嬉しいな。それに、お前はやはり料理人の血が混ざっている気もする。料理の勘がいいから、味の配分がすぐに出来るんだろう」
「それはどうでしょう?最初の頃のことを考えたらあり得ません。父も誰の子だとか言ってたし……」
「……」
「そうだ、お父さんですよ、電話しなくちゃ」
「ちょっと待て。まだ営業中だろ。まず先に、俺にその縁談相手のことを説明しろ」
「えっと、その人は高校の図書委員会の役員で一緒だった先輩です。坂田長野ホテルの御曹司なんですけど、昔は大人しいイメージだったのに、久しぶりに再会したら、だいぶ口が達者になってました」
「ぷっ!お前、いい大人捕まえて口が達者になってましたって当たり前だろ。子供じゃあるまいし。仕事してたらそうなるだろう」
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