上司卒業

6/9
前へ
/236ページ
次へ
「誠司さん?」 「なんだ?」 「私わかっていなかったかも。そんなに会えなくなるんですね。そういえば、開発の人ってここで見たことないですね。書類が送られてくるくらいで、たまに課長が誠司さんと喧嘩に来てたくらいしか記憶にない。しかも半年に一回程度」 「喧嘩って、おい……まあそうだな。あそこに入るには除菌も必要だし、機密もあるので普通の人は入るのも難しい」 「そうだったんですね。ある意味、密室ですね」 「まあ、そうだな」 「私、入社して二年目なのに行ったことないです。そういう場所だっていうことですね。でも甘い香りが立ちこめていて、きっと甘い雰囲気があるから社内恋愛したんじゃないんですか?有紀さんと……」  ワザと言ってみる。 「ま、そうだな。今度も甘い雰囲気になるかな?誰かと?」  にやりと私を笑って見下ろした。私は彼の背中を叩いた。 「裏切り者!両親とお兄ちゃんにも紹介したのに、裏切るんですか?」 「じゃあ付き合っているのを……異動する前に公表するか?」 「え?そ、それは、ちょっと……」  絶対みんなからいじられる。やだよ、針のむしろ。
/236ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1349人が本棚に入れています
本棚に追加