不思議な再会~沢島side1

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 彼女はとても才能のあるパティシエだった。有紀と俺は学生時代ライバル兼悪友だったが、入社してしばらくしてコンビで商品を作る事が多くなり、それから恋人になった。    四年前、彼女が新しい試作商品を作った。それを食べた客の苦情が原因で彼女は会社を辞めた。それと同時に彼女は俺の前から姿を消した。  実は苦情の客は俺を追いかけ回していた女の差し金だとわかった。そいつも同じパティシエで、有紀と付き合う前に告白され交際を断った。そいつは有紀が仕事も出来て、俺と付き合ったことで逆恨みしていたのだ。  半年後、調査結果として課長からそのことを教えられた。彼女は俺の前から姿を消したきり、何をしても連絡がなかった。  俺も会社を辞めたかったが母の実家の取引を考えると辞めることができなかった。それ以降、俺は精神的ショックでケーキが作れなくなった。春日は、精神的に不安定になった当時の俺を、とても心配してくれていた。  ケーキが作れなくなった段階で開発課にはいられなかった。そして、俺は今の役職へ異動になった。俺は客の言いなりになっていた社員軽視のこの会社を、人事課長になって改革してきた。
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