1214人が本棚に入れています
本棚に追加
/236ページ
あれから仕事に全てを捧げ、プライベートをあまり作らないようにして忘れようとしてきた。最近疲れてしまい、お笑い番組を見て、空虚に笑う自分にも疲れてきていたところだった。
そんなとき、俺の作ったケーキを買いに来ていたあの彼女をコンビニで初めて見た。苦情に健気にひとりで対応している姿を見て、とっさに庇ってしまった。
その後、彼女はいつも通り嬉しそうに店へ来て、いつものフルーツケーキを買って帰った。このフルーツケーキは俺が主導して作ったが、有紀と何度も試作をしてリニューアルさせた。俺にとって思い出の商品。
あれを笑顔でいつも買いに来る彼女を見て、ケーキを作れなくなっていた俺はどこか癒やされていたんだと思う。そしてその彼女のピンチをどうしても見ていられなかった。無意識に身体が動いて助けてしまったのだ。
まさか、その彼女がうちを希望して面接に来るとは思ってもいなかった。そして、俺とのエピソードを大切な思い出として面接で話してくれた。益々嬉しかった。
彼女を育てて、立派なOLにしてやりたい。そう思っただけだったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!