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「……私、料理はからきし出来ません。父や板前さん、兄も料理得意なので、賄いをもらって食べていて、自分で作ることはほとんどありませんでした。家では一応母が料理をするんですが、私は何も……」
「お前。もしかして、すごく不器用とかまさかそういうことじゃないだろうな?」
「えっと……否定できないところもあります。どうしてこんな不器用な娘が俺の子みたいに父から言われたことがあります」
「それはひどいな。父親とはうまくいってないのか?」
「お父さんは近所のホテルの御曹司との縁談をもらってきて私に勧めてくるんです。今すぐじゃないけれど、いずれって言って。嫌なのに断ってくれないから……」
「なるほど……お前それでこっちへ逃げてきたんだな?」
「まあ、そうですね。歴史が好きで、本ばっかり読んでたし、勉強はそこそこ出来たので大学受かってこっちへ出てきました」
「それで、縁談はなくなったのか?」
「……それが……」
「まさか、まだあるのか?」
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