失敗と励まし

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「あ、いえ。三年働いて相手が捕まらないなら戻れと言われていて、今時そんなこという親います?まあ、適当に聞き流していれば時効になって忘れるだろうと思っていたんです。それが、結構本気らしくて。昨年末にも帰ったらまた言われて、まだその話生きていたのかとびっくりしました」 「それは大変だな。付き合っている人はいないのか?」 「いたらとっくに説明してますよ」 「まあ、まだ期限まで時間はあるんだろうし、頑張ったらどうだ?」  そうなんだけど、モテない私にはなかなかご縁がありません。言ってもしょうがないから、ため息ひとつ落とした。   「あの、課長」 「なんだ?」 「課長はどうして私がうちのフルーツパウンドケーキを好きなの知っていたんですか?もしかして、駅前の店の人に聞いたことがあったとか?」 「まあ、そんなところかな。秘密だ」  課長は同じ駅前のマンションに住んでいるようで、駅から私のアパートまで送ってやるといってくれてついてきた。  すると結構遠くて、電灯もなく、人通りがほとんどないことに驚いている。
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