失敗と励まし

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「困った奴だな。ここは危なすぎる。人事の、しかも直属上司として、これを知りながら放置できない。とにかく、新居が決まるまでうちへ来い」 「嫌ですよ」 「頼れる恋人もいないくせに。だいたい、他に同居できるような友達が近くにいるのか?」 「失礼な、友達くらいいます。でも、みんな彼氏持ちで忙しいですけどね……」  そうなのだ。何故か大学で出会ったこっちの女友達はたいていみんな彼氏がいる。週末はみんなデートで忙しいのだ。私の相手はしてくれない。  でも、私はひとりで過ごすのが好き。テレビを見たり、本を読んだり。ひとりで買い物するのも大好き。だから不自由に感じることはない。  言っておくが、決して負け惜しみではない。今でもコンビニに行くと店長が余った弁当をくれたりする。それをもらって食べて、賞味期限が近いものを安く買って帰ってきていた。何の不自由もなかったのだ。  課長が横目で私を見てため息ついている。 「しょうがないから、しばらく俺の所に来ることで決定。今週末荷物片付けて少しうちへ持ってこい。時間が余ったら家探しをしよう……ほら、早く部屋に入れ。見ていてやる」
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