強引な誘い

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 部長が立ち上がり、中に入った。沢島課長と話をしている。  そう言えば思い出した。課長はよく昼休み、窓から外を見ている。  いつも同じ方向を向いて見ているので何を見ているんですかと聞いたことがある。すると、工場のほうを指さして、あっちに何があるか知ってるかと聞かれた。  その頃はよく知らなくて、工場ですか?と聞いたら寂しそうに笑っていた。あれは工場ではなくて、横にある商品開発課だということが後でわかった。  課長と親しい営業の課長がいて、沢島課長が外を見ているのを後ろからその課長が眺めていたことがある。その時、呟いたんだ。 「……あいつ、まだ忘れられないんだな」  私は何のことですかと聞いたら、内緒だといわれた。  でも、桜井さんの様子だとやっぱり聞いてはいけないことだというのがなんとなくわかった。みんなも触れない。見て見ぬ振りってやつだと思う。  週末。私はのんびりとしていたら、なんと本当に昼過ぎに課長が現れた。何もせず、部屋着で迎えた私を睨み付けた。 「田崎お前。何してんだ?片付けてあるんだろうな?すぐに出るぞ」
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