課長のケーキは甘い包囲網

強引な誘い

「課長、私昨日の夜メールしましたよ。明日のことはなかったことにしましょうって。既読になりましたよね？つまりOKってことですよね？」

「お前はどうしてそうやって自分にいいように解釈するんだ？俺は一度も頷いたり、わかったと返事をした覚えはない」

「ええ！？それはおかしいですよ。だって、それならそうと言ってくれないと……」

「じゃあ聞く。どこに引っ越しするのか決めたのか？せめて、いくつか迷っているところとかがあるのか？」

　私は玄関で偉そうに私を追い詰める課長を見て、黙った。確かに何もしていない。だって、何とかなるもん。遅くに帰らなければいいし、最悪走って帰ればいい。家賃安いし、それが一番だよ。

「……やっぱりな。真剣に考えてないだろ。お前はそういう適当なところがあるんだよ。とにかく、いつまでここに俺を立たせておく気だ？中に入れろよ」

　あのときのようにＴシャツにチノパンの課長はいつもなら固めている髪を後ろにかき上げると、靴を脱いで勝手にあがった。

「……え？ええ！？」

「そんなことだと思った。冷蔵庫の中は俺が片付けてやる。お前はとっとと荷物をまとめろ」