カボチャプリンの恩人

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 料理や家事は正直不得意だから、父の言うことはどちらも不向きで絶対やりたくなかった。母も、兄もそれをよく知っていたので無理強いはよくないと父に言ってくれた。父は駅に近いホテルの御曹司との縁談話があると私にほのめかした。  このままでは父に囲い込まれると思った。女子力ゼロだったが、勉強は少し出来た。有名大学ではないが、歴史を勉強したくてそういう学部を選んで受けたら幸運にも受かった。  思いきって東京へ出てきてよかった。学生生活は楽しい。母は私がここまでやるとは思っていなかったようで、援助してくれた。兄も応援してくれている。ちなみに兄は他の料亭で板前修行中だ。  大学は奨学金でまかなって、母が家賃を出してくれているが、生活費くらいは自分で稼ごうとコンビニでバイトしている。でも、一年前に仕事帰りの夜道で客の男の人に絡まれてから怖くなり、日中だけのシフトに変えた。  三ヶ月後。私は予定通り就活に入った。  大好きな洋菓子のメーカーだった。駅前にあるその洋菓子メーカーのケーキが大好きで、何か自分にご褒美をしたいときはそこで買って帰った。
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