強引な誘い

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「お前は料理が苦手なようだが、何が得意なんだ?」  得意……そう言われてみれば、しいて何もないかもしれない。 「特に何もありません。残念な人間です」 「どこが残念だ?俺には癒やしで面白い。今日のように可愛いと思うときもある。そのスカート、もしかしてすみれ?お前の名前の花柄だな」 「すごい。よく気づきましたね」 朝も課長のほうが先に出ていくことが多い。要は週末以外顔を合わせないこともあった。  餌付けされているという認識が薄い私は、快適な毎日と仕事に忙殺され、すっかり家探しを後回しにしてしまっていたのである。 「花や草木は、菓子や飴細工などスイーツ作りのモチーフになることもあるから、結構図鑑を見たりしていたから詳しいんだ」 「なるほど。うちの職人さんも紅葉とか南天の葉とか飾るので庭にたくさんそういうものを植えています。私も結構詳しいですよ」 「そういうところは話が合うだろうな」 「ええ。私特にケーキは大好きですからね」 「ああ、それは知ってるよ。そこにあるうちの店の常連だったからな」 「ええ?やっぱり知ってたんですね……恥ずかしい……」 「あはは。嬉しそうに買いに来てくれて店員も喜んでいた」  その日の夜から、課長の作る美味しい夕飯を食べさせてもらうことが出来た。もちろん、課長のほうが忙しいことも多いので、いつも作っているわけではない。
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