料理の師匠

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「私って本当に何も出来なかったんですね。でも、頑張ります。そうすれば女子力もアップして、自力で結婚相手を見つけられるかもしれない」 「縁談があるじゃないか」 「だから、それは……自分で相手を選びます。あの縁談相手は嫌なんです」 「ふーん」 「師匠、よろしくお願いします」  エプロンをして、課長の横に立った。 「なんだか、お前を教えているうちに、俺も初心を思い出してきた。ようやく、もう一度やってみようという気になってきた」 「何をもう一度やるんですか?」 「それは……」 「それは?」 「いいから、ポンコツのお前は人のことを気にしている場合ではない。今日はまずあえものから教えていく。きちんと覚えろよ」 「はい」  課長に敬礼した。うむうむと満足そうに私を見る課長。  私達ってよくわからない関係になってきたけど、相性だけは上司と部下として最高なんだと思う。  だって、料理も習うって……恥ずかしいけど、私にとっては最高の師匠だよ。  それから一ヶ月が経った。今日は私の誕生日だった。
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