料理の師匠

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「ああ、いい感じだ。久しぶりだな、この感覚、この香り……」  私も見に行くと課長が型に入ったスポンジケーキを出していたところだった。 「さてと。あとは冷ましている間にイチゴを切って、ソースとホイップクリームを作る」 「ソース?」 「イチゴのソースと二段にする」 「ジャムじゃなくて?」 「もちろん、違う。今作る」  一時間後、課長が先に下ごしらえをして作っておいてくれたローストビーフを取り出して切った。  前菜とスープやサラダなどを並べてとりあえず食事を始めた。ローストビーフに使ったワインベースのソースが美味しい。  幸せすぎる。にやにやしていたら、課長にほっぺを突っつかれた。 「えくぼが見えてきた。よほど嬉しいのか?」 「とっても嬉しいです。でも、もうすぐ九時ですよ。ケーキはどうするんですか?」 「そろそろ冷えてきただろうから後はデコレーションするだけだ。まあ、食べるのが明日でいいならそれでもいいが……」 「嫌ですよ。バースデーケーキなんですから、今日食べないと……そして明日も食べるんですよ。こんな大きなケーキふたりで食べるんですから、毎日食べますよ」
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