課長の過去

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 何か理由がありそうだから教えて欲しいと言ったのだ。  その時春日課長がどうして知りたいのと聞いてきたから、部内で誰も教えてくれないけど、みんな理由を知っているみたいだから知りたいと答えた。  すると、うーんと言いながら、ここでは話せないから、そのうちゆっくり機会があれば一緒に飲み行こうかと言われて連絡先の交換をしたのだ。  春日課長は、結構しょっちゅううちの部へ息抜きに来ては、沢島課長と仲良く楽しそうに話している。  何に驚くってその時の沢島課長の顔だ。本当に親友なんだなと思う。  私をからかって笑っている顔でもなく、須田さんをいじめて笑っている顔でもない。どちらでもない素の笑顔なのだ。  課長と暮らすようになってわかった。その顔が本当の課長だと気づいた。  春日課長になら聞いてもいいかもしれないと思ってあのときは勇気を出して聞いてみたんだ。  結局、ふたりで飲みに行くという選択肢は課長の手前なかなかできず今に至る。  春日課長は小さい声でキッチンを見ながら話し出した。
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