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「ようやくさっき教えたよ。おそらく、人事総務の若い奴らは噂をうのみにしているかもしれないからな。彼女には真実を教えてやらないとお前が後々困るかもしれないと思ったんだよ。ああ、俺って親切だな」
「……なんだそれ」
「まあ、いいや。それより、今日来たのは話があったからなんだよ」
「なんだ?」
声を小さくして春日は言う。
「実はさ、澄川にばったり会ったんだ。ツインスターホテルのカフェから出てきたんだ。びっくりして、確認したらどうやらあそこのパティシエになっていたらしい」
俺は驚いて顔を上げた。有紀は退職してから全く連絡がない。俺はフラれたのだからしょうがないと思っていた。
「そうか……あいつ、元気だったのか?」
「……沢島。あれから全く連絡取れてなかったのか?」
「ああ、メールしても無視されてた。俺はフラれたんだからな」
自虐的に話した。ビールを一気飲みする。
「本人から聞いて欲しいが、あいつは事件に関係なく転職を大分前から考えていたらしい。でもお前がケーキを作れなくなったと聞いて心配していた。実は何回か俺はあいつから連絡もらってお前のこと聞かれていたんだ」
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