自覚~沢島side2

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「すまない。こんなこと伝えるのは本当に辛いんだが、お互い元気でやっているならそれが一番だと彼女は言ってたよ。ケーキを作れなくさせたのも自分だと責めてた。澄川はお前が自分といると、ケーキ作りから遠ざかると言ってた」 「そんな風に思わせていたんだとしたら俺は最低だな。自分の劣等感を彼女に知られていたんだ。これで交際相手だなんてよく言えるよな。捨てられて当然だ。あのときも俺は何も出来なかった」 「おい、やめろよ。それは、違うだろ。悪いのはお前じゃなくて、当時の周りだ。人事課長だってすごく反省していただろ。だから、お前を入れてくれたんじゃないか」 「……」 「お前がプライベートでは今でも色々作っていて、俺はそれを食わしてもらってんだぞって話したんだ。そしたら喜んでた。お前を頼むとか言われちゃったぞ。ようやく、俺以外にお前を頼める子が現れたな」 「それはまだ、そういうんじゃない。田崎を追い詰めないでくれ」 「もちろんだよ。でも、お前もその気があるんだろ?彼女、素直で可愛いな。表情もくるくる変わるし、一生懸命だし。お前いらないなら、俺が……」  俺は驚いて机を叩いた。
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