自覚~沢島side2

8/19
前へ
/236ページ
次へ
 一緒に暮らし始めて二ヶ月。  頬にキスしたり、後ろから囲って料理を教えたり、まるで付き合いたての恋人まがいのことはしている。  中学生か高校生のような距離感だが……。  春日のはなしを聞いた限りでは、俺のことを多少は意識したり、色々心配してくれているんだろう。  彼女は俺を上司だが、兄のような感じがすると言っていた。兄のポジションではまだ恋人になるのは難しい。  ただ、最近彼女に料理を教えていると初心を思い出す。俺が作った料理を笑顔で褒めて喜んでくれる。  忘れかけていた自分のスイーツを喜んでくれる人のために作りたいという気持ち。  長いこと作ることが怖くなり逃げていたが、ケーキをもう一度作ってみようかという気持ちにようやくなった。  そして、それがこの間の誕生日ケーキに繋がったのだ。  このトラウマを乗り越えるきっかけが彼女だったとすると、俺にとって彼女はもうなくてはならない存在になりつつある。  どうやって気持ちを伝えようかと考え始めた。  キッチンへ戻り、食べかけを片付けて、鍋の中に少し素材を足して田崎も食べられるように作り始めた。
/236ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1322人が本棚に入れています
本棚に追加