ワープして、ズームイン

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ワープして、ズームイン

高校時代は、電車通学だった。 ある朝、雪が降っていて、遅刻しないように、始発の2本あとの電車を目標に家を出た。 雪慣れしていなかったこともあり、革靴のまま登校したのが、間違えだった。 自宅から、最寄りの駅まで、徒歩10分ほどだったが、まともに歩くことが難しかった。 歩いては転け、歩いては転けを、何度繰り返したことか、、、 自分でも、おかしくて泣き笑いするほどのズッコケ具合だ。 しかし、転んでも、タダでは起き上がらない私だった、、、 あんなに近くで雪の結晶を見れたことは、今でも忘れない。 あの時、転んだことで雪の結晶を見れたのは、この為か、、、滅多に見れるものではないし、 転んでいなかったら、今日まで、結晶を見ていなかったと思うと不思議な気持ちになった。 転んだ甲斐があったのだ、、、 転んで起き上がる瞬間、向こうから誰か歩いてくる、、、 恥ずかしいが助けを求めようと、それでも、必死に立ちあがろうと、頑張ってみた。 遠くの方から、サクサク音が鳴っていた。 歩くリズムが良い人だと、雪の上を歩くと綺麗な音がする。 近くなってくると、その人は、なんと我が父であった。 『た、た・す・け・て』転び疲れと、寒さで、声が霞む、、、 『なんだ、お前かっ‼︎ 何時に、家を出たんだ?気合を入れて、立ち上がれっ‼︎』 と言いながら、さっさと、私を置いて行ってしまったのだ‼︎ 「ハクジョウモノ‼︎ それでも親かぁ‼︎ ひどい奴だ‼︎」と言いながら、私は、立ち上がっていた。 悔しい気持ちを胸に、『許さんぜよ‼︎』と強い怒りと、なんとも言えない気持ちで、 そこからは、1度も転ばず駅まで歩けたのだ。 なんてことでしょ〜〜う、、、 ワープして、思ったが、よく見ると、手も差し伸べずに、さっさと駅へと歩いていた父だったが、 1度だけ、振り向いたのだ、、、確かに、、、 振り向いた時の顔が、笑っていた。 あの時、笑って見ていた事に、腹を立てた自分だったが、実は、もっとズームインすると、 『しっかりしろ‼︎ 立ち上がれ‼︎ 強くなれ‼︎』 読唇術ではないが、そう言っていたのだと気づいた。 思い込みって、コワイ、、、 でも、気のせい?と聞かれたら、気のせいって大事だと思う。 それで、元気が出て、幸せなら、気のせいもいいかも、、、 転んだ時に、初めて見た雪の結晶‥‥‥ 雪には秘密があったのです。
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