願い

1/1
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ

願い

 美鈴は疎開先で生活していたが、徐々に戦火が厳しくなってきた。 「お母さん、ここは空襲がないですね」 「そうだね。よかったね」 しかし、疎開先にも空襲が始まったのだ。 ウーン 「空襲だ空襲だ。防空壕に逃げろ」 「うわあ」 「早く、早く」 「お母さん、手を握って」 「美鈴こっちよ」 「わかった」 「最近、空襲が増えたな。日本も‥‥‥」 「馬鹿野郎。貴様は日本人か」 「お母さん、昨日から突然、空襲がなくなりましたね」 「大日本帝国の力よ」 「そうねお母さん」 「ここで知り合ったお友達と山の山菜を取りに行っていい」 「いいよ」 「そのかわり気をつけるのよ」 「戦闘機の音が聞こえたら、すぐ身を隠しなさい」 「はい」 山にて 「山田さん、ほらここに山菜がたくさんあるよ」 「本当ね。ここにもあるわよ」 「本当ね村井さん」 「村井さんこっちがいいかも」 ブ~ン 「みんな戦闘機よ、しゃがんで」 キャー ダダダダダダダダ ブ~ン 戦闘機は離れていった。 「山田さん、村井さん、大丈夫?返事して」 「え……山田さん、村井さん、どうして、動かないの?返事をして」  美鈴は戦闘機の機銃にて足を負傷した。 「ああ、左足が痛い。お母さん助けて」 「美鈴、大丈夫?ちょうどよかった。心配してきたところだったよ。歩けないでしょ?」 「ううん、少しなら歩ける……」 「どうしたもんかね……お手伝してくれる人を探してくるから」 「はい。お母さん」 そして、防空後から、手伝ってくれる人を探してきた。 「大丈夫か?足を銃で撃たれたんだね。さきほど、空襲の避難命令がでたから 防空壕へ急ごう」 美鈴は足の負傷のため、手当をしてくれる人を探していた。 「誰か病院の先生はいないですか?女の子が怪我をして……」 「私が診てみましょう」 「ありがとうございます」 「娘が機銃で撃たれて……」 「ああ、これは傷が深い化膿するな……」 「先生どうすれば……」 「私は内科医だが‥‥‥ああ、傷が深い、傷口をかなり縫わないといけないな でも……美鈴さんと言ったね」 「はい、先生、私の足はどうなるのですか?」 「化膿がひどくなって……」 「先生、どうなるのですか?教えて下さい?」 「それは……」 「教えて下さい」 「いや、それは……」 「先生、手術をして治すことはできないのですか?」 「メスがないから無理だよ」 「先生、あれで……」 「どうした?」 「あそこにノコギリがあります。あれで深い傷を切ってください」 「ノコギリだと?いや、それは出来ない。無理だよ。ノコギリなんだぞ。 わかっているのか」 「はい。私はあの人に会いたいのです」 「いや、私には考えられない。出来ない」 「お願いします。先生。会いたい人がいます。どうしても」 「ここには麻酔もないから、激痛だぞ。耐えられるはずがない」 「いえ、大丈夫です。我慢します」 「無理だ……」 「先生、縫わないとどうなるのですか?」 「化膿がさらにひどくなって、命を落とす事もある。内科医の私に出来るだろうか……」 「先生、お願いします。お願いします 」 「約束の場所で、婚約者と会う約束をしています」 「激痛で失神するぞ」 「大丈夫です。先生お願いします」 「じゃあ、覚悟はあるのだな?本当に覚悟があるのだな?」 「はい」 「じゃあ、始めるぞ。お母さん、体を押さえていて」 「わかりました」 キャー やめて、やめてください 明さん、助けて 「なんとか耐えましたけど失神しました。よほど、婚約者に会いたかったので 「ありがとうございました。先生……」 「彼女の強い願いだよ」 「お母さん、必ず傷の消毒だけはマメにして下さい」 「はい」 明さん、約束の場所に必ず行きますね 待っててくださいね
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!