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やきもち
明が通う高等学校は男女共学で、さほど生徒数は多くなかったが、どちらかというと女学生が多かった。明は女学生にとってあこがれの的であった。明が廊下を通ろうとしていた時の事だ。
「キャー、ほら」
「明さんが通ったわよ」
「ハンサムね」
「本当ね」
「勉強もできてスポーツ万能、彼女いるのかな?」
「どうかな?」
「私のもの」
「私の彼よ」
「そんなことないでしょ」
「話しかけてみる?」
「いや、恥ずかしい」
「どうしよう?何かいい方法ないかしら?」
「そうね、やっぱり話しかけるしかないでしょ」
そして、女学生は一斉に明に話しかけた。明は女学生に興味はなかったが仕方無く応じた。
「明さん足が速いですね」
「いや大した事ないよ」
「明さん誰か好きな人いるのですか?」
「う~ん、秘密だよ」
明は恥ずかしくてたまらなかった。そして、美鈴の事が気になっていた。美鈴はやきもち焼きだったからだ。そのため、女学生との対応に悩んでいた。
「それなら私が手紙を書いていいですか?」
「う~んいいけど……」
「私のことどう思いますか」
「優しそうだよ」
言葉を一つ一つ選ぶ明に対して女学生の勢いは止まらない。次第にエスカレートしていくばかりだった。
「キャー」
「じゃ、今日から手紙を書いて渡しますね」
「明さん返事を書いてくれるとうれしいな」
「う~ん、最近忙しいから書けないと思う……」
「そうですよね明さん身長も高いし女性に人気があるから……」
「そんなことないよ」
その時であった。
バタン
強く教室の扉を閉める音が室内に響いた。
「あ、美鈴さん。どうしたの?」
明は焦った。美鈴がやきもちをやくのは容易に想像できたからだ。想像していたとおり、美鈴は怒りを隠せなかったのだ。美鈴は強い口調で明に自らの気持ちをぶつけた。
「どうせ、私の事は好きでもなんでもないでしょ。明さんは、やっぱり女性にモテますからね、どうせ私は……」
明は何とかその場を収めたかった。そして慌てていた。
「泣かないで、美鈴さんが一番好きだよ」
恥ずかし気な言葉が静かに教室に響いた。
「もういいです……他の女性と仲良くしてください。この間の海辺の出来事は遊びだったんですね。それではさよなら」
美鈴はやきもちをやいてしまったが心にもないことを言ってしまったのだ。
必死に弁明する明。
「誤解だよ」
「もういいです」
「困ったなあ、どうしよう。どうすれば許してくれるかな」
「じゃあ、みんなの前で美鈴が好きだと言ってくれたら許します」
そう言ってしまってから、後悔する美鈴だった。それに対して明の選択肢はひとつしかなかった。
「わかったそうするよ」
みんなが集まる時間とはホームルームの時間であった。明は勇気を振り絞るしかなかった。
「みんな聞いてくれ」
明の大きな声が恥ずかし気に響いた。
「どうした、どうした?」
「どうした、明?」
「俺は美鈴さんが好きだ」
ついに、本心をクラスメートの前で言ってしまったのだ。
「これでいい?美鈴さん」
「うん」
小さくうなずく美鈴。明は次第に怒りの感情が湧き出て怒りは収まらなかくなった。
「そんな恥ずかしいことを言わさないでくれ」
「他の女の子と仲良くするからよ」
後悔しながらも言い返す美鈴。
「でも、本当に美鈴が好きだよ。どうかなりそうだよ。夜も眠れないことがある」
美鈴はさらに小さな声で明に呟いた。
「本当かしら」
「ああ、でも、これでもてなくなっただろ」
「そうね。許してあげる」
また、心にもない事を言う明。
「美鈴さんは本当に恐いよ」
「明さんが悪いのでしょ」
「女性から話しかけられただけじゃないか」
「じゃあ許してあげる」
「まいったな、いちいち話しかけられただけで、怒ってもらうと困るよ。僕も許せない。勝手にしろよ。なぜ、みんなの前であんな恥ずかしいことを言わないといけないんだ。しばらく君とは合わない。」
思ってもいないのに収まりのつかない明。
「明さん、ごめんなさい。短気をおこしてしまって……」
「僕を信じていない証拠じゃないか、僕が他の女性とお付き合いするとでも思ったのか」
「明さん本当にごめんなさい」
「わかりました。じゃあ、私が……」
美鈴はこれとばかり、覚悟を決めてある行動にでたのだ。
「みなさん、私は明さんとお付き合いしています。好きでたまらないです。」
「これでいい?明さん」
「そこまでしなくていいのに……わかったまた仲良くしよう。じゃあ、いっしょに帰ろう。」
「はい。」
そして、家路へと帰ろうとした時のことだった。
「さっきはごめんね。美鈴さん」
「ううん、私がいけないの?」
「もう今から喧嘩はしないようにしよう」
「そうね」
「でも、喧嘩しない方法ってどうすればいいのだろう」
「明さんが女の子と話しなければいいのよ」
「それは出来ないだろう。話しかけたら答えないといけないじゃないか」
「口をつむっていればいいでしょ」
「そんな事はできないよ。じゃあ、美鈴さんは話しかけられた時はどうするの?」
「私は口をつむるわ」
「できないだろう」
「できるわよ」
「嘘をついたらいけなじゃないか」
「嘘じゃないわよ」
次第にエスカレートしていく二人
「嘘じゃないというのが嘘だろう」
「どうして、酷い事を明さんは言うの」
「だって、本当のことじゃないか」
「もう、明さんの事は嫌い」
「ああ、俺も嫌いだよ」
やっぱり喧嘩をする二人だった。
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