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再会
明は美鈴を想う
美鈴さんは元気にしているかな
女学生の話は嘘に決まっているじゃないか
美鈴さんが一番きれいだよ
でも、もう会えない
8月12日には出撃する
生きては帰れないと思うと辛い
特攻基地になんと美鈴が現れた。
「明さん」
「美鈴さん。どうして、ここに?」
「親戚の方が九州に行く用事があって、ついでに乗せてもらいました。着いてから、基地まで送ってもらいました」
「美鈴さんに会えるとは思わなかった」
「私もです」
「明さん、いつ頃、帰ってくるのですか?」
「そうだね……きっと帰ってくるよ」
「待っています。女学生の可愛い子を見てみたいです」
「ああ、あれは冗談だよ」
「いえ、見たいです。明さん噓をついてないですか?」
「そんな事はないよ」
「じゃあ、女学生の前で美鈴が一番好きです。そう言ってください」
「前の時も怒ったじゃないか」
「今度は駄目です。だって、可愛い女の子がいるのでしょ?」
「冗談だよ。それだけは許してくれ」
「じゃあ、私が言います」
「それも勘弁してくれ。困ったったなあ」
「わかりました。許してあげます。ここは自転車がないのですか?」
「ないな」
「今日も明さんと運転したかったな」
「ちゃんと運転できないじゃないか」
「そうね」
ハハハハ
「明さん重いから」
「美鈴さんより軽いよ」
「失礼ね」
「俺が運転してあげるよ」
「明さん。夜いっしょにいたい」
「そうだけど、兵舎を抜け出して来てばれたら大変だよ」
「美鈴に会うのと怒られるの、どっちがいいの
「もちろん、美鈴さんと一緒に会いたいよ」
「本当、今度は強く抱きしめてくれる」
「もちろんだよ。今度は強く抱きしめるよ」
「前みたいに少しじゃ駄目よ」
「わかっているよ」
夜が訪れる。
「静かだね」
「はい、明さん」
「まるで何も起きないみたいだ……」
「どういうことですか?」
「美鈴さん」
「どうしたの」
「美鈴さん……」
「何かあったのですか?」
「美鈴さん…………」
どうして、何℃も呼ぶの?
「呼んでみただけだよ」
翌日になって。
「美鈴さん自転車を借りる事ができたよ」
「本当ですか?」
「乗せてあげるよ」
「ありがとうございます」
わあ
キャー
「やっぱり重いな」
「もういじわる」
「美鈴さんが今度は運転してみて
「はい」
「やっぱり左右に動くじゃないか」
「明さんが重いからよ」
ハハハハ
「明さん、そろそろ帰らないと……」
「自転車でいっしょに帰ろうか」
「無理ですよ」
「そうだね、でも、もう一度乗りたいね……美鈴さん、1日だけだったけど楽しかったよ」
「私も楽しかったです」
「美鈴さん元気でね。また会おう……」
「明さんも」
「それでは」
「はい」
「美鈴さん、元気でね」
「明さんもね」
あの頃の海へ帰れるのだろうか
それとも、二人は時を失ってしまったのだろうか
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