女の子が落ちていた。

「そ、そうだよね。や、や、やっぱり友山くんもそう思うよね！　あ、あとね。僕はこのタコ星人の変化が、過去行われたロボトミー手術における人間の変化を示唆していると思うんだ。前頭葉を取られた人間が攻撃的になる事例がきっとこのタコ星人の変化で、タコ星人によっては感情を失ったりする事例もあるんじゃあないかな？」
「あのさぁ、真鍋君――」

　俺が言うと、真鍋はきょとんとした顔で俺の目を見つめた。その小動物みたいに純粋無垢な表情に、思わずため息が出る。

「タコ星人の話は百歩譲って許そう。ただ、前頭部がどうとかの話をするのは、この場にそぐわないと思わないか？」

　俺の目の前のテーブルにはイカ墨のパスタとサラダの盛り合わせが置かれていた。彼の前にはミートソースがこびりついた皿だけが置かれており、先ほどまで乗っていたスパゲッティは、五分ほどで真鍋が平らげてしまった。――大方、お金持ちであろう叔母様方がテーブルを囲むイタリアンレストランに真鍋を連れてきたのは失敗だったと、俺は頭を抱えた。