女の子が落ちていた。

4/22
前へ
/22ページ
次へ
 彼が吐しゃ物やセックスの話を平気でするような奴なら、すぐにレッドカードを出して店から退場させれば済む話なのだが、彼は巧妙な手口で審判に見えないようにファールをするのだ。それも、本人には不正をしている自覚がない。だから俺も途中までは気づかずに聞き流すのだが、気づけば吐き気を催すような話が展開されており、ただ、それが直接的な表現ではなく、実に指摘のしずらい内容であるから、止めるまでに時間がかかってしまう。だが今回は俺側にも、切々と訴えざるを得ない理由があった。 「君が切り落とされたタコの腕にある脳神経の話をしている前で、イカの足がはいったパスタを食べなきゃならない俺の気持ちが分かるか?」 「お、同じ頭足類の話をしたのが不味かったということ?」 「理解が早くて助かるよ」と、半分嫌味を込めて言ったつもりなのだが、真鍋は喜んでいた。  真鍋は決して悪い奴ではないのだが、どこかズレていたし、SF小説の話になって興奮すると早口になってどもる為、彼の話が聞き取れないことは多々あった。(そういうときは適当に相槌を打って聞き流すというのがベストなのだ)
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加