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夜の出来事
田貫家の2人が眠った深夜、しとしとと雪は降り続けていた。周囲の住宅も寝静まり、闇夜が広がっている。煌々と輝く街灯だけがポツンと存在感を示していた。そんなとき、不思議な声が聞こえてきた。
「家はどこ?」
ズルズル。
「この辺りのはずなんだけどなあ」
ズルズル。
「あっ、ここだ!」
ズルズル。
雪の上を何か引きずる音が響き渡った。
家の中で田貫夫婦はその怪しい物音に目を覚ましていた。
「何か引きずる音が聞こえた。しかも庭のほうからだ」
「そうね。何の音かしら?」
「泥棒かもしれない」
「まさか。盗む物なんて置いていないわよ」
2人は恐る恐る玄関に向かった。ゆっくりとドアを開けると、家の駐車場に黒いポルシェが止まっていた。
「ポルシェだ!」
「あなた、どういうこと? 電車で帰ってきたんじゃないの?」
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