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「はいそれではカンパーイ!!」
諸見里社長の号令で会は始まった。この大衆居酒屋は意外に机同士の間隔が狭く、カウンターはお客様で既に満席、若い女将さんと坊主頭だけれども見た目が大変麗しいく細マッチョだがいかつめの大将がふたりで切り盛りしていた。宴会コースだったのでカウンターからは離れており、モバイルオーダーで頼んだ飲み物をホールスタッフが運んできてくれた。
もつ煮やサラダ、ポテトにから揚げなどの定番メニューが並べられたが、どれも規格外のボリュームで驚いた。
(あ、から揚げ美味しい…)
人が作った料理なんて久々に食べた。建真は外食するくせに、私はどこにもつれていってくれないし、生活費だっていつもギリギリしかくれないから足りなくなった時に追加でお金をもらうときが本当にしんどい。なんで私も働いているのに、こんな苦しい目に遭わされなきゃいけないんだろう。胸中で文句を言っていると、隣の席から陽気な声が聞こえてきた。
「はははー。そりゃひどいなー」
「らろぉ。僕だって頑張っているのにぃ! れもお、娘やぁ、妻はぁ、僕を邪魔に思っててえええぇ…」
「おいおい、ちょっと飲みすぎじゃねーの」
「居場所ないのは辛いよ…うう…」
隣の席が近いためサラリーマンの男性4人組の会話が丸聞こえだった。一人が酩酊して妻や娘の不満の鬱積を同席している彼らに語ることで発散している。チラ、と横目で彼らを見た。不満をこぼしている方は見るからに優しそう。眼鏡をかけた気弱そうな人だ。若いのに気の毒…って思ったけど、夫に虐げられている私も似たようなものか。話せば気が合いそうでお互いの伴侶の愚痴大会ができそうだ。
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