答え、合わせ

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答え、合わせ

「くそっ、出ろよ」  耳にコール音が入るたびに、イライラが増していく。 「出ろ出ろ出ろ出ろ出ろ出ろ出ろ出ろ出ろ」  何度命令しても「なに」という少し怒ったあいちゃんの声は聞こえることはない。電話もでないし、メッセージも未読。転校という事実で、事故や誘拐などのネガティブな不安はないけど、それが逆に悲しさと怒りが混濁して言動に反映されていく。 「なんで……」  私に言ってくれなかったんだろう。  それだけが頭の中心にあって、今までの思い出が消されるように範囲を拡大していく。なんで、なんで、と真意が分からず、ただの推測が次々に私を切りつけてくる。 「あーもうっ!」  机を叩く。こんなのおかしい。おかしすぎる。だから、あいちゃんを一発ぶん殴ってやろうという勢いだけで学校を飛び出す。二十分走ってあいちゃんの家についてももう空だった家に帰って母に聞いて問い詰めて、場所を聞いて電車に乗って夜ついた。  きっとこんな感じだったと思う。 「わんちゃんってたまにバカなことするよね」 「あいちゃんに言われたくない」  道中あまり覚えていない小旅行を経た私は、あいちゃんの親に保護された。お年玉を使って片道分しか残ってないのに、後先考えずに出てきてしまったことに今更ながらぞっとする。もし保護されなかったら完全な迷子だ。知らない土地で迷子なんて笑えない。 「なんでなにも言ってくれなかったの」 「言ったよ?」 「嘘、聞いてない」 「ほら昨日」 「昨日?」  そんな話はしていない。朝でもないし、昼間もそんなことは話題にはなかった。放課後だって。 「青い秋の話、覚えてない?」 「青い秋?」  うっすらとだけ記憶があった。私が勉強している側でうるさくしていた中の話題だったような気がした。 「青い秋のことを知ったらその次の日にはその人の一番大切なものが消えてなくなってるんだって。って言ったよ、わたし」 「……? 意味わかんないんだけど」 「ははっ、ちょっと散歩しない?」  振り回されてる感が拭えないまま、あいちゃんのお母さんに言って、二人で外に出た。
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