プロローグ:ビジホでお願いします。

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プロローグ:ビジホでお願いします。

「……ビジホでいいの?」 「……うん。お願いします」  ついさっきまで知らない人だった男性に、ホテルを予約してもらっているという状況。  うら若き乙女が(はした)ない、なんて思われるかも知れないが、今は状況が状況なのだ。  事の発端は……どこなのだろう。  乗車中の新幹線が運休になったこと? いや、その時間の新幹線に乗った理由は出張の予定が短縮されたからだ。じゃあ出張が順調に進んでしまったせい、ということになるのか。  いやいや違う。それ自体はとても喜ばしいことだった。お客さんだって喜んでいたし。私だって昨日は心地よい達成感に包まれて眠ったさ。  だから要するに、出張そのものが悪い。じゃあ出張に行かせた会社が悪い。ていうか働かないといけないという社会が悪い。  ……あれ、私って今、何を考えていたんだっけ。  このままじゃあ「生まれてきたことが悪い」とかいう支離滅裂な結論になりそうだから、ブレインストーミングはこの辺で終わりにして、今朝からのことを少し思い出して行くとする――。
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