Ⅰ.見合わせ

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 ――寝ていても異変には気付くものである。  私は新幹線の減速を感じて、ふと目を開いた。窓際の利を活かして眠っていた私はすぐに外の様子を確認できた。  新幹線は徐々に減速し、駅でも何でもない線路上に停車した。周囲の乗客たちも外を気にしたり、腕時計を見たり、そわそわし始めた。  すると車内アナウンスが流れる。 『大宮駅付近で線路内確認を行っているため、只今全線で運転を見合わせております。発車までしばらくお待ち下さい。お急ぎのところ電車が遅れまして大変申し訳ございません』  機械的にそう発してアナウンスが切れた。線路内に立ち入りがあったとか、障害物があったとか、そういった影響なのだろうと思った。きっとすぐに動き出す。そう感じたのは私だけではないようで、電車は止まっていながらも、車内の雰囲気は平穏を取り戻していた。  それを後押しするように、程なくして電車が動き出した。  私も安心し、再び窓に頭を寄せて目を閉じる。  ――が、しかし。  動き出して十分も経たないうちに再び電車が減速を始めた。  そして嫌な予感を裏付けるように、アナウンスが発せられた。 『上野大宮間で架線の垂れ下がりが確認されたため、北陸新幹線は全線でしばらく運転を見合わせます。この電車は現在、上田駅と軽井沢駅の間に停車しております。情報が入るまでしばらくお待ち下さい。ご迷惑をおかけして大変申し訳ございません』  徐々に止まっていく電車から外を見た。  はらはらと、雪が舞い始めていた。
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