幼馴染のαにとろかされた平凡βの話

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「何言ってるの、ダメに決まってるじゃん。そんな危ないこと」 「いやいやいや、友達と遊ぶだけだから」 「あのねー、僕以外のやつと遊びに行くってことは、きもい視線に晒されて、奈緒が乱れてるところを妄想されて、おそわれるってことだよ」 いつもは柔らかい口調を少し強めて、綺麗な瞳をどろりと溶かして俺のことを見つめている。 ちらりと視線を向けると、神様が全力で作ったような完璧に整っている顔を不機嫌そうに歪めている。 事の発端は、俺がいつものように幼馴染のこの男、蒼の部屋でなんとなく話していた事だった。友達と遊びに行くということを聞いた途端、今までダラっとスマホを弄っていた蒼が漫画を読んでいた俺を壁際まで追い詰め、ブチ切れた。 「友達って、最近転校して来たやつのこと?」 「うん」 「あいつなら尚更だめ。クズじゃん。」 「は?話したこともないくせに何言ってんだよ。それに人のこと言えないだろ」 頭にきた俺は蒼の家を飛び出して、あいつと距離を置くことを決心した。 なにも距離を置くって決めたのは今回のことだけが原因じゃない。 顔良し、頭良し、外面良し、神様に二物も三物も与えられた俺の幼馴染は、性格がひん曲がっている。それはもう盛大に。何かと都合が良いから外面は良くしているらしいが、人を人として見ていないクズだ。 これでもあいつの幼馴染を17年してきた。蒼がどんだけ論理感が欠如していても、女の子の事を裏ではブスと言っていても受け入れてきた。何より俺は特別だと言われていたし、そう感じてもいた。他の人よりも大事にされているのもわかっている。だが、最近の蒼は俺の行動に制限をかけすぎている。 「僕たちは運命だからね。これぐらい当たり前だよ」らしいが、あいにく俺は平凡なβの男だ。蒼に運命を感じることはできない。 ということで、初めての蒼なしでの生活が始まった。 1日目 開放感で気分が良かった。 2日目 そわっとしている気がしたが、知らないふりをした。 3日目 何かが足りない気がして落ち着かなかった 4日目 俺の部屋に置いてあった蒼の私物をかき集めて、蒼の服を着た 5日目 朝から体が熱くて、怠くて、1日中蒼の服の匂いを嗅いで、頭の中が蒼でいっぱいだった 6日目 体の奥が疼いて、1人で慰めて、でも治らなくてぐずぐず泣いていた 7日目 寂しさと体の疼きに耐えきれず、蒼に電話した 「ふっ………ひっく、ひっく………ふぅ…ぁ…ひゃああああ」 「あーあ、できあがっちゃって、可愛いなぁ。ねぇ?奈緒」 「………?あおい?」 「うん、そう、奈緒の大好きな僕だよ。はは、こんなにぐずぐずに泣いて、体も溶けちゃいそうにして、辛そうだね?僕のいない1週間は辛かったでしょう?」 うっとりした表情を見せる蒼に悔しさを抱きながらも、目の前にいることが嬉しくて、ぐずぐずしながら、両手を伸ばす。 「あのね、奈緒、自分のことβだと思ってるみたいだけど、奈緒はもう僕のΩになってるんだよ。毎日、僕の濃いフェロモン浴びせてたら、変化したんだよ?ふふ、そんなことにも気づかないなんてバカワイイね。」 とんでもないことを言われて、ばかにされても、俺を抱っこしたまま座った蒼にしがみついて、腰を揺らしてしまう。話す余裕なんてない。 「もうなんでもいいからぁ、はやく、ね?、はぁ、はやくしよ?」 深いため息が聞こえてきて、不安になって蒼の顔を見上げようとすると、すごく濃い蒼のフェロモンに包まれた。耳に低く艶のある声が流し込まれた。 「そんなに煽ってさぁ、責任とってね?大丈夫、僕がわけわかんないぐらい、気持ちよく、とろっとろにしてあげるから、何にも心配しなくていいよ」 それからは宣言通りわけわかんなくなった。蒼のフェロモンでさらに発情して、何もしなくても甘イキする。蒼に体中なめられて、跡つけられて、焦らされる。 結局、他の人と2人きりで会わないことや、ずっと一緒にいること、来世もそのずっと先も一緒にいることを約束させられて、やっと入れてもらえた。 気持ちよすぎて、泣いている俺に優しく口付けを落としながら、蒼が囁いた。 「僕の運命。愛してるよ」 綺麗な顔を恍惚とさせて、俺を見るこの男に運命を感じることはできないと思っていた。だけど、蒼は運命だって変えられるのだ。どんなにクズでも、俺以外どうでもいいと豪語する論理感皆無野郎でも、俺の心も体も蒼を愛していると叫んでいる。 ふにゃっと緩んだ顔を蒼に向けて、呟いた。 「すきだよ、なによりも、だれよりも、だから、ね?噛んで?」
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