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貫太と家族は、村の人達に反旗を翻そうとしている。きっと、ただ村の役目に反抗するだけではないのだろう。何か、村の掟に背くようなとんでもないことをやろうとしているのだ。
何をしようとしているかはわからないが、間違いなく命に関わることだろう。
村の人達は、鬼の存在と同じくらい、自分達がやっていることが外に露呈することを恐れている。村の連帯感を乱す輩は、けして許しはしないだろう。
ただ村から追い出されるとか村八分にされるとか、そんな程度で済むとは思えない。
「何をする気かはわからないけど、君達家族だけで出来ることなんてたかが知れてる!大きな力に逆らったら、潰されるのがオチなんだ。村の人は、何百人といるんだよ!?」
「わかってる。けど、このまま鬼たちが漁船を強盗するのを黙ってみてることはできねえ。このまま強盗が続いたら、島に火薬を仕掛けて吹っ飛ばすしかねえと大人達が話しているのを聴いたんだ。つまり、島に閉じ込めるだけじゃ飽き足らず、島の人達をみんな吹っ飛ばすつもりなんだ。悪しき鬼を殲滅するって名目でな」
「そ、そんな……」
言葉を失った。それが本当なら、とんでもない話だ。大量虐殺だ。
いくら村の人達が“あれは鬼なんだから怪物退治でしかない、虐殺なんかじゃない”と言い訳しても、だ。
「……安心しろ、そんな大それたこと考えてるわけじゃねえ」
にっと笑って、貫太は言った。
「ただ、島に船で食べ物を届けるだけだ。島に十分食べ物があるようになれば、鬼ってことにされた人達も飢えずに済むし、強盗しなくて済むだろう?なあに、バレないようにうまくやるさ」
うまくやる。彼はそう言ったが、僕は到底気が気ではなかった。
彼だってわかっていることだろう――バレないはずがない、ということは。
――それでも、やるのか。
生きるために、生きる。死んだように生きたって、生きてい要るとは言えない。
その日から僕はずっと考えるようになったのだ。貫太が言っていた、言葉の意味を。
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