忘れもしない

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 ゴクリと唾を飲みかけて、ゲホゲホとむせる。 「華さんは最期の力を振り絞って、私たちに真実を残してくれました」 “ママ”  凍っていた雪を指でのけながら、必死で書いたのだろう。地面の雪では新雪で消えてしまうだろうと。 「最初は美瑠さんが書いた字かと思いましたが、美瑠さんはおかあさんと呼んでいますよね。そして、この文字は窓の外側に書かれていた」  華さんは許してくれない  冷たくしたアタシを 「華さんにとってのお義母さんだと解読しましたが、違いますか?」  かじかんだ指で、震える身体で遠退く意識の中で。 「アタシが指示しました」  同じ思いをと思っていたのは、華さんもだったのね。 *  シンシンと雪が降り続いて、キュキュと幻聴が、幻覚が見えた。 「進みなさい!!」  栗色の髪を窓に張りつけて、これでもかと目を見開いている華さんの血走った目がアタシに微笑みかけているのが見えた気がする。 「冷たいよ」  青ざめた唇からそんな声を聞いた。 おわり
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