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なるべく感情的にならないように努力して話したつもりだが、正直イライラは隠しきれていなかったと思う。扱いが厄介なのは花だけで充分だ。奴ら、毎日「綺麗だね」と言ってやらないとすぐ拗ねて枯れてしまうし、水だって少なすぎたり与えすぎても文句を言ってきやがる。それに比べて、僕が冬眠していても黙って咲いてくれる椿や蠟梅は好きだ。椿の花言葉は「控えめな素晴らしさ」、蠟梅は「奥ゆかしさ」。通常、花言葉を決めるときは花の機嫌を伺いながら、相手が喜びそうな言葉を選ぶものだが、椿と蠟梅に対しては心から出た言葉だった。
そして僕は、目の前にいる氷の魔女をみて、通常、こういう花を相手取るときは、機嫌を伺いながら相手が喜びそうな言葉を選んでやる必要があることを思い出し、また溜息がでた。
「強く言い過ぎてすみません。でも花が咲かないとあらゆる生態系が乱れて、絶滅してしまう生物だって出てきてしまう。そうならない為には貴女がたに冬を演じてもらう必要があるんです。分かってくれますか?」僕が言うと、彼女はこくりと頷いた。――ようやく話が前進した。
「では氷の魔人がいなくなってしまった今、気温をさげて、雪を降らすことが出来るのは貴女しかいないということも分かってくれますね?」
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