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「別れよう」
隣のテーブルから聞こえた言葉に、私は瞬間的に耳を傾けた
カフェで別れ話かと私は思い、気づかれぬよう目を左に寄せると、制服を着た高校生の男女がいる
高校生がカフェで別れ話とは、立派な時代になったなと感心したが、すぐに言葉にできないむずむずした思いが胸をよぎる。
「私の時代は…」と心で呟きながらも、今後の展開がすごく気になった。
「別れよう」と言った言葉の主は、彼氏の方だ
その言葉に、少し間を置きながら彼女はこう言った
「なんでよ、私なんか悪いことした?」
彼女は声からでもわかるほど動揺している
だが、彼氏の方は腹を決めているような図太い声で
「そういうことじゃない、ただ、もうミカのことを友達としか見れなくなった。」
と答えた。
そのやりとりに私は「今時の高校生は」と思い、彼氏の方に喝を入れたくなったが、
私の思いが通じたのか、彼女の方が先程とは一転した強い口調で
「それって自分勝手じゃん」
と言い、場を膠着させた。
その後声のトーンが落ち、耳を傾けてもカフェの他の音で掻き消され、聞こえづらくなったなと思っていると、
隣から笑い声が聞こえるではないか。
もう仲直りしたのか⁉︎
と思い、また目を左に寄せると2人とも満点の笑みで、期間限定のオシャレな飲み物の写真をスマホで撮っている。
あの短時間で解決したのかと、絶対に解けぬ問題を頭の中で巡らせた。
彼らより私は、10歳ほど年上だが別れ話をしたすぐ後に笑ったことなど1度もない。
いつも険悪なムードになり、やるせない気持ちで数日過ごすことになるのが、お決まりかのようになっている
彼らはあの数分で何を話したのか、まだ気になってしょうがないと、片手にコーヒーを飲みながら考えていると
彼らは飲み物を飲み終え、その場を立ち上がった
彼らが後ろ姿になったので、よく見てみると、手にはお揃いの手袋をしていた。
先程の数分がなければ、2人とも雪が舞う夕空の中、いつもより余計に寒い思いをしながら、帰路につかなれければならなかったが
今では、寒さも吹き飛ばすほどの熱を帯びているだろうと思い、
羨ましい気持ちを抱えながら飲み途中のコーヒーを眺め、自分の世界に入ろうとしていた時
「お待たせ」と声がした。
顔を上げると、私の彼女であるユイがいた。
ここで待ち合わせをしていることを、すっかり忘れていた
だが、そんなことを悟られてはならないとすぐに笑みをこぼして、すぐにたわいもない話を振った
そう少し話していると
彼女は話を切りこう言った
「あのさ実は今日、話があるの」
私はすぐに別れ話が頭に浮かんだ、そこからの話は
雪が溶けるころに持ち越しておこう
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