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アンドロイドのアレックスが僕の元に送りこまれてきたのは、2年前のことだった。
世界の片隅で起きた銃撃戦に巻き込まれた彼は、全身が破壊されてただの金属片となり、脳に当たる部分の損傷も危ぶまれるほどの状態だった。
彼の電源が入らなければ、蓄積された貴重なデータは取り出せない。透視の結果、脳は無事だとわかったため、体の修復が許可されたのだ。
僕は横たわるアレックスの傍らに立った。
透き通るような白く柔らかな肌。
瞳を閉じていてもわかる端正な顔立ち。
まるで、眠れる森の─
「アレックス。起きて」
僕が声をかけると、彼はゆっくり目を開けた。
琥珀色の綺麗な瞳が僕を捉えた。亜麻色の短い髪にその瞳がとても映えている。
やっぱり この色にして正解だったな
「僕は未來。ここは僕のラボだよ」
彼は体を起こして辺りを見回した。
『状況確認 解析中』
彼の電子回路が目まぐるしく動き始めたのがわかる。
彼は僕を視界に認めると、少しだけ口元を緩めた。
「こんにちは。未來さん」
耳に心地いい声だ。
「今日からここが君の家だよ。気分はどう? どこか痛む?」
「いえ。とてもいいです。指先までちゃんと動きますし、認識機能も良好です」
「よかった。酷いケガだったからね。しばらくはゆっくり休むといいよ」
僕がそう言うと、アレックスは僕の顔を見て淡々と答えた。
「私は大丈夫です。液体燃料さえ頂ければ」
「…ああ。そうだったね」
「あなたが私を助けてくれたのですか」
「うん。そうだよ」
「ありがとうございます。私に出来ることがあれば、何でも仰って下さい」
そう言われて、僕はあることを思いついた。
「じゃあ、早速頼むよ。僕と話す時は敬語はナシだ。友達と話すような口調でね」
「友達、ですか」
不思議そうに首を傾げた彼は、しばらく僕を見ていたが、にっこり笑った。
「わかったよ。未來」
僕も笑みを返した。
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