アレックスの目覚め

3/3
前へ
/16ページ
次へ
 科学や医学の技術が発達して、治らない病気は減っていき、失われた身体の一部を再生したり、機械に置き換える『自在化(フリーダムプロセス)』が可能になった。 昨今行われているパラリンピックの選手は、機械化率や再生部位でかなり厳格に出場枠を選別され、ついにはオリンピック選手を上回る記録を出す人物まで現れた。 僕はこの歳になるまで大病もせず、大きな外傷を負わなかったことを幸運だと思っているが、健康体なのに、自ら進んで自在化(フリーダムプロセス)の施術を受ける人たちもいる。 今のところ、それ自体は違法ではない。 ただ、自分の能力を最大限に引き出し、富や権力を手にしようとする輩がいるのも確かだ。 一方でそれらの技術を生かして、アンドロイドの研究も著しい進化を遂げた。 中身こそ金属や電子回路が詰まっているが、人工皮膚の感触は僕らのものと遜色がないし、体温も感じることが出来る。様々な髪や瞳の色が、彼らに個性を与え始めていた。 いつでも冷静な判断を下せる彼らは、ビジネスパートナーとして僕たち人間の心強い味方だ。そして彼らの方も人間と暮らすことで、少しずつ感情を学んできた。 つまり、限りなく人間に近づいた彼らは、見た目も感情も、人間と何ら変わらない日常生活を送ることが出来るようになった。 基本、アンドロイドは人間に対して嫌悪感情を持たないとされている。穏やかで従順であるゆえに、プライベートでは心の拠り所になることも多い。 さすがに感情の起伏や表出は人間には及ばないが、僕とアレックスがお互いに好意を持つようになったのも、さほど不思議なことではなかったのだ。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加