雪のかけら

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コンビニで買ったポテトサラダとフライドチキンをつまみにビールを飲みながら、俺は例のペットボトルを眺めた。 ミネラルウォーターの空きペットボトルに、無色透明な液体。ただの水に見える。そっとふたを開けてにおいをかぐ。 「無」だ。 なんなんだこれは。ただの水か? さすがに口に入れる勇気は出ない。 冷凍庫に入れろといってたな。製氷皿にあけろとも言っていた。そのままじゃダメってことは、密閉してはいけないのだろう。 「どうする?」 俺は、ペットボトルの横に、ニャニ坂48のメンバー坂崎さおり、愛称さおりんのアクスタを並べた。アクスタとは、アクリルスタンドの略称だ。小さいアクリル板の中にアイドルの全身写真が封入されているもので、旅行に行くときなどに持参し、風景の中に紛れ込ませて写真を撮り、インスタにあげるのだ。「〇〇ちゃんと沖縄♡」みたいなね。俺は旅行に行く暇もないから、部屋の本棚に並べてにやにやしてるだけなんだけど。 さおりんのアクスタは、1stアリーナツアーの衣装を着て、かわいらしく飛び跳ねるポーズをとっている。 さおりんのことを思い浮かべながら、冷凍庫に入れればいいのか? 俺の冷凍庫には、小さい製氷皿しかついていなかった。ゴム手袋とゴーグルを装着して、小さいボウルに液体をあけて冷凍庫の中にいれた。 さおりんのアクスタを枕元に置いて、俺は就寝した。 翌日はずいぶん早く目が覚めた。朝、というよりはまだ夜明け前だ。僕は再びゴーグルとゴム手袋を装着して、冷凍庫を開けた。 「!!!」
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