雪のかけら

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「で、おまえはどうしたんだ」 「俺は、死にたくなかった。カイロを握りしめながら、どうか俺に気づきませんように、って祈ってた。でも無駄だった」 「気づかれたのか」 「ああ。一直線に俺のほうに歩いてきた。そして、俺の顔をのぞき込んだ。・・・きれいだったよ。この世のものとは思えなかった」 「そりゃ雪女はこの世のものじゃないだろ」 「細かいことはいいんだよ。雪女はしばらく俺の顔をのぞき込んだ後、手を伸ばしてきたんだ。俺は直感したね。これにつかまれたら死ぬ。だから戦うことにした。俺はずっと眠っているふりをしていたけど、手が伸びてきた瞬間、手首にカイロを押し当てたんだ」 「どうなったんだ」 「絶叫だよ。この世のものとは思えない超高温の絶叫だ。その音のせいで、俺は意識を失った。朝になって目覚めると、よく晴れた青空が広がっていた。安心して身を起こすと、ゴロンと何かが転がった。なんだと思う?」 「なんだったんだ」 「手首だ。氷でできた手首だ。カイロで溶かされた雪女のものと考えるのが妥当だ」 「・・・なるほど」 「美しかった。この世のものとは思えなかった」 「だからこの世のものじゃないんだよ」 「俺は手首をビニール袋に入れて、キャンプ場を後にした。気温が上がると手首は解けて水になっていた」 「残念だったな」 「ふん」 大西は言葉を切った。体が弱っているから、続けてしゃべるのがきついのかもしれない。
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