ルーム貝

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 しみじみとそんな気持ちに浸っていた、そんな時だった。 「……あれ?」  ヒロトは首を捻る。  いつものようにふたりで鍵を回そうとするのだが、何故か鍵が動かない。 「ん? なんか今日は固いな」 「本気でやろう、せーのっ」  タイミングを合わせ、本気で力を込める。それでも長方形の鍵はびくともしない。今まではひとりだけでも少しずつ動いていたというのに、それは動く箇所などないかのように固まっている。 「おかしいな……も、もう一回だ!」 「う、うん!」  大きく息を吸い、全身全霊で腕に力を込める。  動かない。  外への鍵は、微動だにしない。 「……おい、やばいよ」 「……どうしよう」  現実逃避しようとしても、この分かりやすい状況がそれを許してはくれない。  お互い、本当は何が起きているのか知っている。  不安がどんどん肥大化し、部屋の中に広がっていく。
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